シリーズ10

筑後吉井の小さな美術館めぐり実行委員会
  • 代表:野上 静雄
  • 会員:56人
  • 事務局:吉井町役場町おこし課
  • 電話:09437(5)3111
  • 運営費:会費や賛同者から一人1万円、町から助成金が30万円
  • 詳細:http://www.chiikinet-fuku.org/member/?GrID=00124

今年5月のゴールデン・ウィークに開かれたレトロフェスタには18万人の人手。写真は、人気の叩き売り 吉井町の「小さな美術館めぐり」は今や全国ブランドのイベントとして知られるまでになり、5月のゴールデンウイークの開仙催期間中(5月3〜5日)にはJR東日本が観光ツアーを企画すノるなど東北の人々まで毎年訪れる。正式には「筑後吉井の小さな美術舘め・ぐり」といい今年で11回目を迎える。ことの興りは平成元年に遡る。例の竹下内閣の「ふるさと創生1億円事業」で町当局はプランを一般公募した。採用にこそならなかったが、この時、町民サイドで「地域づくり」の一プランが持ち上がった。「採用されなくても、われわれでやろう。」。平成3年に立ち上げた。実はそれが今の隆盛を迎える「小さな美術館めぐり」の出発になるのである。運はわからないものだ。

町の歴史と文化に注目

 実行委員会を結成して運営にあたる野上会長は真宗の住職さん。「当町は国道210号が走り、久留米から日田に抜ける通過点にす ぎませんでした」。人口1万7000人、過疎傾向の町だが、江戸期には天領・日田へと通じる豊後街道の宿場町として人の往来が絶えず、しかも近郷の豊かな諸物産の集散加工地として栄え、その名残りは白壁土蔵の商家跡に見てとれる。
 それらの文化財を生かし、歴史と文化の薫りある町づくりを−−との願いで旗上げしたのだった。具体的には、旧家や一般家庭が所蔵 する美術品を公開してもらうこと。焼き物などは制作者に待機してもらい、見学者との対話で「出会いの場」にする。

年間来訪者50万人!

門司港レトロ5周年を記念して今秋、北九州市出身の漫画家、松本零士の個展を開く 「町ごと美術舘」のこの構想は当った。初回こそ見学者が8千人ほどだったが、評判を呼び以後、毎年2万〜3万人が訪れる。「会場」は今年、町内30カ所。また、この動きに刺激されて、年中、多様な催しも開催されるに至った。画廊や古美術店など常設展示場もある。年間来訪者、50万人。みごとな町づくりとなった。